子どもが「頭が痛い」と訴えたとき、パパ・ママは不安になりますよね。「大丈夫かな?」「何か病気が隠れていないかな?」と心配になるのは当然です。子どもの頭痛には環境やストレスによるものから、病気が原因のものまでさまざまあり、適切な対応が求められます。
この記事では、子どもの頭痛の種類や受診の目安、家庭でできるケアについて解説します。子どもの小さなサインを見逃さず、家族でサポートしていきましょう。
子どもが「頭が痛い」と訴えるのはめずらしくありません。頭痛は幼児期からみられ、10歳以降から増える傾向にあります。
幼児の場合は「かゆい」や「寂しい」と混同してしまい、痛みの評価が難しいことも。また、子どもの頭痛は身体的な痛みだけでなく、心理的ストレスが影響するケースもあるため注意が必要です。
まずは子どもの声に耳を傾け、不安を取り除いてあげることが頭痛改善への第一歩となります。
子どもの頭痛は原因が特定できない「一次性頭痛」、原因がある「二次性頭痛」に分けられます。一次性頭痛には片頭痛や緊張型頭痛、二次性頭痛には感染症やケガなどによるものが含まれます。
一次性頭痛の片頭痛や緊張型頭痛の特徴をみていきましょう。
片頭痛 | 緊張型頭痛 | |
頻度 | 小学生の約3.5% 家族歴のある子どもに多い |
小学生の約5.4% |
特徴 | 発作的な強い拍動性の痛み 子どもでは拍動性がはっきりしない場合もある |
締め付けられるような痛み 圧迫感を伴う痛み |
部位 | 片側性 子どもでは両側性(前頭部や側頭部)が多い |
両側性 |
体動による悪化 | 悪化する | 悪化しない |
頭痛以外の症状 | 吐き気・嘔吐を伴うことがある | 吐き気・嘔吐は少ない |
持続時間 | 2〜72時間 | 30分〜7日間 |
前兆 | キラキラした光が見えることがある 前兆がみられない場合もある |
なし |
光過敏・音過敏 | 両方 | いずれか一つ |
頭痛の特徴を理解しておくと、子どもの頭痛に気づけ、適切な対応や受診につながります。
二次性頭痛は、原因となる病気の治療が必要です。以下に主な例と特徴を紹介します。
・ウイルス感染症
子どもの二次性頭痛で最も多い原因です。風邪やインフルエンザに伴う発熱、全身倦怠感とともに頭痛が起こります。
感染症が改善すれば頭痛も軽くなります。
ただし、まれに髄膜炎や脳炎を合併することがあり、発熱に加え頭痛、首の硬直、意識障害などがみられます。
・副鼻腔炎
鼻詰まりや色のついた鼻水に加えて頭痛や発熱を伴います。頭がぼーっとして集中できない場合もあります。
・頭部外傷
転倒や衝突後の頭痛は、急性硬膜下血腫や慢性硬膜下血腫の可能性があります。病状の進行に伴って、頭痛がひどくなったり、嘔吐の回数が増えたり、けいれんがみられたりします。血腫(たんこぶ)や頭蓋骨の陥没(かんぼつ)骨折などは子どもの外傷でみられる特徴のひとつです。
また、子どもは自分の症状をうまく言葉で伝えられず、「ぼんやりする」「眠りがちになる」「活気がない」など、はっきりしない変化として現れる場合もあります。
・髄膜炎や脳炎
髄膜炎や脳炎は、風邪やインフルエンザの感染に伴い、ウイルスや細菌などの病原体が脳やその周囲に進行し炎症を起こします。進行の早いものもあり、治療が遅れると命に関わる可能性があります。
・脳腫瘍
徐々に悪化する頭痛、早朝に強い頭痛、嘔吐や視力障害、けいれんを伴う場合は脳腫瘍が疑われます。脳が圧迫されると、まひや視野障害が起こることもあります。
頭痛に加えて次のような症状がある場合は、受診の目安に当てはまる可能性があります。
早急な治療が必要な場合もあるため、「ただの頭痛」と思わず病院を受診してください。
緊急度 | 判断基準(当てはまる場合) | 行動目安 |
すぐ救急車を | ・叫ぶほどの激しい痛み ・けいれんがある ・意識がもうろう/普通に受け答えできない |
今すぐ119番 |
今すぐに受診 | ・3回以上の嘔吐がある ・8時間以上うとうとしている (声をかければ受け答えできる) |
1時間以内に病院へ |
慌てず受診 | ・普段と様子が違う ・38℃以上の発熱がある ・頭をぶつけた ・鼻汁・鼻づまりがある |
6~8時間以内に病院へ |
明日には受診 | ・上記に当てはまらないが、頭痛が続く | 24時間以内に病院へ |
判断に迷ったときは、かかりつけの小児科医に相談しましょう。夜間、休日には「子ども医療電話相談事業(#8000)」に連絡すると小児科医や看護師に相談ができます。
二次性頭痛では、原因となる病気ごとに治療法やホームケアの方法が異なるため、医師に確認が必要です。病院で緊急性がない一次性頭痛と診断された場合の、ホームケアの方法をみてみましょう。
子どもが頭痛を繰り返す場合、まずは生活リズムを整えることが重要です。頭痛を予防し、症状を軽くするためには、次のような生活の見直しが役立ちます。
・十分な睡眠をとること
子どもに必要な睡眠時間を確保し、寝る時間・起きる時間を一定に保つよう心がけます。夜は暗く静かな環境で、リラックスして眠れるように整えることが大切です。
・バランスの良い食事を規則正しくとること
長時間の空腹を避け、1日3食しっかり食べる習慣をつけましょう。
頭痛の誘因には、睡眠不足やストレス、疲れ、緊張、天気の変化、月経周期、特定の食べ物などがあります。
ただし、すべての誘因を完璧に取り除く必要はありません。無理に避けようとするとかえってストレスになり、頭痛が悪化する場合もあります。
子ども自身が「自分の体調や調子」を把握し、自分に合った調整方法を身につけることが重要です。たとえば、疲れたら休む、朝食をしっかりとる、夜は早めに寝るなど、日常の中でできる自己管理が効果的です。
子どもの頭痛は「気のせい」ではありません。精神論で対処するのではなく、まずはつらさに寄り添うことが大切です。
「頭痛日記」を活用すると、頭痛のパターンが把握しやすくなり、医師への説明にも役立ちます。
頭痛日記では次のような内容を記録します。
・いつ頭痛が起こったか
・どのような痛みか(ズキズキする・締め付けられる感じなど)
・どのくらい続いたか
・吐き気や光・音・匂いへの過敏さの有無
・飲んだ薬とその効果
・頭痛の誘因(きっかけ)
頭痛日記は、家族や学校の先生と共有することが大切です。
家族は学校での頭痛のきっかけを把握しやすくなり、先生は頭痛が起きた際の対応に役立ちます。周囲の大人が子どもの状態を理解しやすくなり、より適切なサポートにつながります。
二次性頭痛の場合には、原因となる病気の治療が必要です。一次性頭痛ではまず生活習慣を見直し、それでも頭痛が続き日常生活に支障が出る場合は薬の使用を検討します。
なお、頭痛のガイドラインでは緊張型頭痛の薬についての明確な記載がないため、ここでは片頭痛で使われる薬を紹介します。薬を使用する際は、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
子どもの片頭痛の治療薬には、アセトアミノフェン(商品名:カロナール)、イブプロフェン(商品名:ブルフェン)があります。痛みが出始めてすぐ飲むと効果的とされています。年齢や体重に応じた用量管理が必要です。
月に4回以上片頭痛が起こる場合や生活に支障がある場合には、予防薬の使用が医師によって検討されます。
処方される薬は、アミトリプチリン、トピラマート、プロプラノロール、ロメリジンなどがあり、副作用に注意して少量から開始します。
子どもの頭痛はめずらしくありませんが、重大な病気が隠れている場合もあります。まずは子どもの訴えに耳を傾け、心身の状態を一緒に確認することが重要です。
生活習慣の改善や頭痛日記など、できる範囲から始めていくことで、頭痛の軽減や予防につながります。親子で無理なく取り組みながら、必要に応じて専門医のサポートも受けていきましょう。
著者:押手秀人
診療放射線技師
参考: