「いきんでも便が出ない」「おなかが張る」「排便時の痛みで泣く」
子どもが便秘のサインを見せることはありませんか?便秘は、乳幼児にもよく見られる症状です。便秘にいち早く気づき、つらい症状を取り除くために、便秘に関する正しい知識を身に付けましょう。
便秘に気づくために、どのような症状があるのか知っておきましょう。また、便秘の原因を理解しておくと、便秘の予防・解消に役立ちます。
便秘とは、腸の中にたまった便をスムーズに出せなくなる状態です。排便の回数や便の量が減る、いきんでも便が出ない場合は、便秘の可能性があります。
便秘に伴う症状として、おなかの痛み・張り、おなかの不快感、排便時の肛門(こうもん)の痛み・出血などが見られます。便秘のサインを見逃さないよう、日頃から子どもの様子をしっかり観察しましょう。
便秘の原因は一つではなく、複数の要素が関係しています。
1.生活習慣
偏食、母乳・ミルクの不足、水分・食物繊維の不足、運動量の不足、排便の我慢など、生活習慣が影響します。
2.心の状態
緊張やストレスなど、心の状態も便秘をまねく原因です。時期や方法が適切でないトイレトレーニングや、排便時の痛みなどがきっかけで、子どもがトイレを怖がり、我慢するケースが見られます。
3.体の状態
腸の動きが鈍い、便秘を伴う病気がある、牛乳アレルギーなど、体の状態も便秘の原因です。
子どもの成長過程には、便秘を引き起こしやすい時期がいくつかあります。特に以下のような時期は、子どもの体調と共に、便通状況もチェックしましょう。
・母乳からミルクへ変更した時
・離乳食を始めた時
・トイレトレーニング期
・幼稚園入園時
・小学校入学時
毎日の食事内容が、腸内環境に影響を与えると考えられています。
善玉菌を含む食べ物と食物繊維たっぷりの食べ物は、腸内環境を整えるのに役立ちます。ただし、食事内容が偏らないよう、バランスの良い食事を心がけることも大切です。
■善玉菌を含む食べ物
善玉菌は、腸内に住んでおり、体に良い影響を与える細菌です。乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌などが代表的で、ヨーグルトやチーズ、漬物、納豆などの発酵食品に多く含まれます。
便秘症の人を対象に腸内に住む細菌を調べたところ、乳酸菌とビフィズス菌の割合が低下していることがわかりました。そのため、便秘症には善玉菌の補充が有効ではないかと考えられています。
■食物繊維たっぷりの食べ物
食物繊維は、水に溶ける性質の違いによって、2種類に分けられます。水に溶けやすいのが「水溶性食物繊維」で、水に溶けにくいのが「不溶性食物繊維」です。水溶性食物繊維は、善玉菌を増やす働きがあり、海藻・果物・豆・芋に多く含まれます。不溶性食物繊維は、便のかさを増やし、排せつスピードを早める働きも。豆・芋・穀物・果物・きのこ・野菜に多く含まれています。
水分不足にならないために、こまめに水分をとる習慣を付けましょう。
子どもに必要な1日あたりの水分量は、1歳未満の場合、体重1kgあたり100mLが目安となります。1歳から6歳までの場合、体重1kgあたり80mLです。
生後8か月・体重8kgの条件で、1日あたりの水分量を計算してみましょう。
8(kg)×100(mL)=800mLとなります。
ただし、計算で求めた数値は一つの指標であり、子どもが摂取する水分量には個人差があります。気温が高い日や下痢・発熱などの体調不良時には、上記の目安より多めの水分が必要です。特に1歳未満の場合、母乳やミルクを含めて、欲しがる分だけ水分を与えましょう。
生活リズムを整えると、決まった時間に排便しやすくなります。毎日同じ時間に起床・食事・就寝しましょう。ストレスをためないようにし、心も体もゆったり過ごすことも大切です。
しかし、排便のリズムが安定しても排便を我慢すれば、便秘を引き起こす可能性があります。トイレトレーニング中やトイレが自立している子どもには「便意を感じたらトイレに行くように」と伝えましょう。
腸の動きを促すために、定期的な運動も効果的です。毎日の遊びや散歩などで、体を動かす習慣を付けましょう。ハイハイ前の子どもの場合は「の」の字を書くようにお腹をマッサージしたり、両足を前後に動かしたりしましょう。
便が出なくて困った時に役立つ対処法をご紹介します。
便が出ない時は、家庭で対処できる場合もあります。年齢別の対処法は、以下のとおりです。
■1歳未満は綿棒浣腸
大人用の綿棒を用意し、綿棒の頭の部分にベビーオイルかオリーブ油を付けて、すべりやすくしておきましょう。綿棒の頭の部分が隠れるくらいまで肛門に入れて、肛門の内側の壁に沿って円を描くように、約10秒優しく刺激します。
■1歳から6歳までは市販の浣腸薬
浣腸薬は、肛門から薬を注入するタイプの薬です。医師の処方せんがなくても薬局で購入できる商品もあります。ただし、年齢によって薬の使用量が異なるため、子どもの年齢に対応した商品を選びましょう。迷った時は、薬剤師に相談すると安心です。
腸の中に硬い便がたまっている状態で飲み薬を使用しても、より苦しくなる可能性があります。まずは浣腸で便を出してから、飲み薬の使用を検討するという流れが一般的です。
ただし、飲み薬が必要なほどの重い便秘症状は、何か病気が隠れている場合もあります。自己判断で対応しようとせず、必ず医師に相談しましょう。
便秘が続くと、腸の中に硬い便がたまり、無理に排便した時に肛門が切れてしまいます。さらに、腸の中に便塊(便のかたまり)ができると「遺糞症(いふんしょう)」を引き起こす場合があります。遺糞症とは、自分の意思に反して、便塊の隙間から便が漏れてしまう状態です。
また、便秘が原因で、腸に隣接する膀胱(ぼうこう)と尿道(尿の通り道)の働きにも影響が出ます。すると、泌尿器の感染症や遺尿症(尿漏れ)、夜尿症(おねしょ)などの合併症を引き起こす場合があります。
便秘の重症化や合併症を防ぐために、次のような症状が見られたら、早めに医療機関を受診しましょう。
・おなかが張っている
・おなかの痛みを訴える
・食欲がない
・しばらく便が出ていない
・いきんでも便が出ない
・硬い便が出る
・排便時に泣く、肛門の痛みを訴える
子どもの便秘は、生活習慣の影響や心身の変化、成長の節目に起こりやすいといわれています。便秘対策の基本は「バランスの良い食事」と「規則正しい生活」です。あわせて、大人は子どもの気持ちに寄り添いながら、子どもの成長・発達を温かく見守りましょう。
便秘のサインを見逃さないよう、日頃から子どもの様子を観察することも大切です。便秘を放置すると、重症化するだけでなく、合併症を引き起こす可能性もあります。子どもが便秘でつらそうな様子を見せた時は、迷わず医療機関を受診しましょう。
著者:おだあずさ
薬剤師
参考:
・日本小児栄養消化器肝臓学会 小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン
・厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~健康用語辞典 乳酸菌