薬局での待ち時間が長いと感じたことはありますか。
子どもと一緒だと特に大変ですね。いつものお出かけより荷物は多いし、子どもを待合室でおとなしく待たせるのも一苦労です。医療機関でさんざん待たされた揚げ句に薬局でもだなんて、ため息が出ても無理ありません。どうにか待ち時間を減らせないのでしょうか。
この記事では、薬局での待ち時間の理由とできる対策について解説していきます。
そもそも、なぜ調剤薬局で待たされる場合が多いのでしょうか。

処方せんに書かれた薬を袋に入れるだけ。薬局の仕事をそう思っている人も多いかもしれません。しかし実は薬局での業務は多岐に渡ります。
・処方せんの内容をパソコンに入力する
・副作用が出たことのある薬が処方されていないか確認する
・他に飲んでいる薬との飲み合わせを確認する
・記載されている保険の情報に間違いが無いか確認する
・薬の内容や量、服用回数、処方日数は適切か確認する
・前回までの経過から考えて不自然な変更は無いか確認する
処方せんに疑わしい点があると、電話で医師に確認しなければなりません。変更内容を薬剤師から提案するケースもあります。場合によっては本やインターネットで最新の情報を調べることも。調剤が完了したらミス防止のために、別の薬剤師が再確認する手順が一般的です。
子どもの薬は年齢や身長、体重によって量を微調整するので、処方内容の確認にも調剤にも時間がかかりがちです。
錠剤と違って液体の薬や粉薬は計量器で測り取り、プラスチック瓶に入れたり専用の機械でパックに詰めたりする必要があります。時には、大人用の錠剤を砕いて準備することも。
塗り薬も薬によっては手間がかかります。複数の塗り薬を混ぜる場合は、ひとつずつ測り取った後しっかり混ぜ合わせ、容器に詰める工程が必要です。
「スタッフが多いのに時間がかかる」待合室から見てそう感じる人もいるかもしれません。
調剤薬局では同じスタッフに見えても薬剤師とそうでない人がおり、分業するのが一般的です。薬剤師の手が足りず、準備がスムーズに進まない場面もあるでしょう。
さらに「薬を調剤できるのは薬剤師だけである」と法律で定められています。一般のスタッフは薬剤師の業務を手伝えないのです。
万一、不適切な薬を患者さんが飲んでしまうと命に関わることもあるので、薬局では確実で安全な手順に沿って薬を準備します。それは一方で、患者さんを長く待たせてしてしまう原因になるのです。

薬を準備する時間は減らせなくても、待ち時間を有効に使う方法はいくつかあります。
処方せんをもとに保険調剤する薬局を「保険薬局」といい、保険薬局である旨が看板やポスターなどで掲示されています。処方せんは、保険薬局であればどこでも受け付け可能です。
キッズスペースのある薬局で子どもを遊ばせながら待つのも良いでしょう。絵本やおもちゃを備えている薬局や、ドリンクサーバーを利用できる薬局もあります。
ショッピングセンターやショッピングモールに併設されている薬局も増えてきました。処方せんを預けて外出し、看病に必要な買い物に行くのも良い方法です。
ただし、受診した医療機関から遠い薬局だと、処方された薬が在庫にないことがあります。その場合、卸売業者から薬が届くのが翌日以降になるケースも。
薬がすぐに必要な場合は、あらかじめ電話やFAXなどで薬局に連絡して在庫を確認するか、医療機関のそばの薬局を利用しましょう。
処方せんを薬局に預けたら、待ち時間を自宅で過ごすのもおすすめです。
子どもの体調が悪い場合は家で休ませ、後で受け取りに行きましょう。他の家族が取りに行っても問題ありません。
薬を受け取る際には、体調や体質などについて質問される場合もあります。そのため、患者の状態をわかっている人が行くか、わかっている人と電話連絡が取れるようにしましょう。
また、あまり知られていませんが、処方せんには有効期間があります。期間内であれば、薬局へ処方せんを出すのは後日でも問題ありません。医師が処方せんに有効期間を記載していない場合は「処方せん発行日を含む4日間」が有効期間です。有効期間を過ぎると再度受診が必要になるので注意しましょう。
あらかじめ処方せんの内容を薬局へ知らせておくと、行く前から準備を始めてくれます。
従来は薬局へFAXする方法が一般的でしたが、近年では処方せんネット受付サービスやアプリも出現しました。準備が完了すると通知が届く機能が備わっているものもあります。
また、厚生労働省は2023年1月から電子処方せんのサービスを開始しました。このシステムを利用することでも、処方内容を事前に薬局に伝えることができます。
初めての薬局では問診票を書く必要があったり、体質や体調について詳しく尋ねられたりします。これは、処方せんの内容だけではなく、副作用の経験やこれまでの経過などの情報も必要だからです。
前回と違う薬局へ行くと、同じ内容を尋ねられる可能性があるほか、お薬手帳の確認に時間がかかる場合もあります。そのため、毎回同じ薬局を利用する方が、スムーズに薬を受け取れる場合が多いでしょう。
また、かかりつけ薬局を持つことは厚生労働省も安全性の観点から推奨しています。薬を飲んだ後に体調の変化があった場合や市販薬を購入した際なども、気軽に相談できて安心です。
状況によっては他の手段も有効です。
薬局によっては、薬を配達してくれる場合があります。有料の場合もあるので事前に確認しましょう。
「子どもの体調が優れない」「仕事に戻らなければならない」など、早く受け取りたい旨を薬局に伝えてみましょう。
準備を急いだり待ち時間の目安を教えたり一時帰宅や配達を勧めたり、便宜を図ってくれるかもしれません。
患者さんが安全に薬を服用できるよう、調剤薬局ではさまざまな業務を担っており、準備に時間がかかる場合があります。しかし、自分に合う薬局に行く、後で受け取りに行く、さまざまなサービスを利用するなど、待ち時間を有効に使うことは可能です。
少しの工夫で待ち時間によるストレスを減らし、子どもの治療に前向きに寄り添っていきましょう。
著者:まついみゆき
薬剤師
薬剤師で2児の母。調剤薬局に14年、ドラッグストアに3年勤務した経験、学校薬剤師として小学校に4年従事した経験あり。
2023年、ライター業に転向。医療ライター・取材ライターとして活動している。
参考:
・保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令 第7条