「子どもの聞こえが気になる…」
子どもの聞こえ方について心配になるママ・パパがいるのではないでしょうか。
本記事では、子どもに起こる難聴の原因や特徴、適切な対応方法について解説します。子どもの聞こえにくさを感じるママ・パパは、難聴に対する理解を深め、適切に対応しましょう。
難聴とは、音の聞こえが悪かったり、音の区別がつかなかったりする状態です。放置すると、コミュニケーションに支障をきたし、学校生活や社会生活が困難になる場合があります。とくに幼児期に難聴がある場合、言語発達に影響が出る可能性があるため、早期治療が必要です。
耳は、内耳(ないじ)・中耳(ちゅうじ)・外耳(がいじ)の3つに分けられます。
難聴は、内耳・中耳・外耳・聴神経経路のいずれかに不具合があると起こります。
子どもの耳が聞こえにくい原因として、以下3つの難聴が関係することを知っておきましょう。
伝音難聴とは、外耳や中耳になんらかの支障があり、内耳まで音が正常に伝わらない状態です。おもな原因は、以下のとおりです。
・中耳炎:中耳にウイルスや細菌が感染し、炎症を起こしている状態。
・中耳奇形:鼓膜の奥にある耳小骨が変形したり、なくなったりする状態。
・外耳道閉鎖症:耳の入口から鼓膜までの外耳道が塞がる状態。
伝音難聴になると、手で耳を塞いだときのように音が小さく聞こえます。聞こえの神経自体は作用しているため、神経まで音が伝わるように治療すれば聞こえを良くできる可能性があります。
感音難聴とは、内耳や耳の神経になんらかの支障があり、音を感じない状態です。おもな原因は、以下のとおりです。
・遺伝:親から難聴の原因遺伝子を受け継いだ場合に発症することがある。
・内耳奇形:内耳にある三半規管や蝸牛が変形している状態。
・ウイルス感染:先天性風疹症候群、おたふく風邪などが起因となる。
感音難聴になると音が小さく聞こえたり、歪んで聞こえたりするため、音を聞き分けるのが難しくなります。難聴の程度が悪化するほど、聞こえる範囲が狭まり、補聴器による治療が困難になるとされています。
混合難聴とは、伝音難聴と感音難聴の両方の症状がみられる状態です。
「子どもの耳が聞こえにくいかも?」と心配するママ・パパは、以下に示す耳が聞こえにくい子どもの特徴を目安に様子を確認してください。
難聴になると、複数人で話すときや遠くから呼びかけるときに反応が乏しいケースがあります。また、音の出るおもちゃに反応しなかったり、聞き返しが多くなったりするのも特徴です。とくに、聞く姿勢になっていないと聞こえていないことがあり、質問に対して適切に回答できない場合があります。
難聴の子どもは、自分で発した言葉を自身で聞きにくいため、発音がおぼつかないことがあります。また、本人は聞こえたとおりに発音しているつもりでも、音を正確に認識できていないため、言葉を正しく伝えられないこともあるでしょう。
難聴になると耳が聞こえにくくなり、周りとのコミュニケーションがうまくとれない場合があります。周りの様子を見てから行動するため、行動が遅れることもあります。友達と上手に会話できないため、人との関わりを避けるケースもあるでしょう。
子どもの聞こえが気になり始めたら、健診や耳鼻科を受診し、医師や保健師に相談しましょう。
市町村で実施している乳幼児健診を受診し、医師や保健師に子どもの聞こえについて相談しましょう。必要に応じて受診すべき医療機関を教えてもらえます。乳幼児健診は、1歳6か月ごろ・3歳ごろにありますが、子どもの聞こえが心配な場合には、健診を待たずにかかりつけの耳鼻科を受診することが大切です。
かかりつけの耳鼻科を受診し、聞こえの状態について相談しましょう。「多量の耳垢」「耳かきで鼓膜が傷つく」「中耳炎」などが原因の場合は、適切な治療によって聞こえが改善することもあります。
耳垢や中耳炎などが原因ではない難聴の場合は、以下のように対処すると日常生活がスムーズに送れます。適切な方法で子どもをサポートしてあげましょう。
耳垢や中耳炎などが原因ではない難聴の場合は、以下のように対処すると日常生活がスムーズに送れます。適切な方法で子どもをサポートしてあげましょう。
難聴の程度や聞こえにくいのが両耳か片耳かといった要因によって、補聴器や人工内耳などによる補助を検討する必要があります。補聴器を利用する場合は、小さめの音からスタートし、家庭での様子や聴力検査の結果によって、少しずつ適切に調整していくことが大切です。耳鼻科の医師の診断に基づき、必要に応じて補聴器の販売店で調整してもらいましょう。
補聴器を使用しても効果が得られない重度の難聴の場合は、人工内耳で音を感知させる治療法もあります。治療後すぐに聞こえが改善するわけではないため、療育機関で聴能訓練を受ける必要があります。
難聴の子どもが生活していくためには、ママやパパのサポートが必要です。子どもと話すときは、向かい合って口元をはっきり見せながら話しましょう。また、表情や身振りをつけながらやや大きめの声でゆっくりと話すのも有効です。
乳幼児の場合は、自宅でのサポートに加え、療育や発達支援を目的とした事業所の利用を検討してみましょう。児童発達支援事業所・センターでは、日常生活における基本的動作や必要な知識・技能を学習できます。また、集団生活に適応するための訓練も受けられるため、成長・発達に良い影響を与えるでしょう。
難聴の状態によっては、基礎学力やコミュニケーション力の向上を目的とした聾(ろう)学校や特別支援学校への就学も推奨されています。療育や支援を受けたい場合は、市町村の障がい福祉担当課や児童福祉担当課へ相談してください。
子どもの難聴を放置すると、周りとうまくコミュニケーションがとれなくなり、日常生活に支障が出る場合があります。子どもに声をかけても反応が乏しかったり、言葉を正しく発音できなかったりする場合は、健診や耳鼻科を受診しましょう。
難聴と診断された場合は、聞こえの程度に応じて補聴器や人工内耳を活用し、家庭でサポートしてあげましょう。また、児童発達支援施設や聾学校・特別支援学校の教育を受けると、基礎学力やコミュニケーション能力の向上が期待できるため、日常生活が送りやすくなります。
医師や言語聴覚士、市町村の障がい福祉担当課や児童福祉担当課に相談しながら、子どもをサポートしてあげましょう。
著者:ゆし
医療機器メーカー営業の傍ら、2022年2月より「医療ライターゆし」のライターネームで活動中。執筆実績は1,000を超え、大手医療系オウンドメディアやクリニック・病院のホームページなどで多くの医療記事・症例/疾患記事・取材記事・LP制作を対応。
https://note.com/yushi7writer/n/n8ba1d23d15bb
参考:
・埼玉県立小児医療センター 耳鼻咽喉科|難聴のお子さんをおもちの保護者のみなさまへ~基礎編~